年下関西人のSくんアゲイン③

会ったことがない人を好きになった話

「お邪魔しまーす!」

「どうぞ〜」

「はじめまして、にこです!気まずい!」

あっ、声に出ちゃった。

 

「細いな」

「◯◯◯(某坂道系アイドル)に似とるな」

「芸能人に疎くて誰だかわからないけど、たぶん似てないよ。笑」

お部屋は広ーいワンルームで、白い壁にプロジェクターを投影してある。

四人がけのテーブルには個包装のお菓子が沢山置いてあって、送ってくれた画像で知ってはいたけどめちゃくちゃ人が出入りしてそうな印象だった。

一人暮らしなのに椅子が9脚もある。

 

とりあえず、入口付近の椅子に座る。

彼は黒髪の短髪で、髭、焼けた肌に、背は173cmくらいのシュッとした体型。

白いTシャツに黒いパンツという超シンプルなファッションだった。

そしてわたし好みのたれ目だった♡

 

「ソファがベスポジなんで良かったら座ってください」

む?

ソファはちょっと危険では、、、

わたしがでっかいふかふかソファに移ると、彼は仕事用のデスクチェアに座った。

 

あ、ですよね。疑ってごめん。

 

「ごはん食べました?こんなに遅くなるなら食事しててもらえば良かった」

「いや、食えんわ。にこさんは食べました?」

「えーと、お昼は食べました」

胸がいっぱいとはこのこと。

ソワソワしすぎてお腹も空かなかった?

 

そのまま40分くらいお喋りして、いつも電話で聞いていた声が口から聞こえることに感動する。

わたし、この人の話し方とか声が心地良くて好きだなあ。

 

マンションの屋上に移動して、買ってきてくれた花火を開ける。

「全然取れない。セコムしすぎだ〜」

「ほんまや。やりますよ」

テープを外してくれる。

花火にも火をつけて渡してくれる。

わたしはなんでもひとりでできるけど、根がスーパー甘えたなので嬉しい。

 

「わー!わたし今年初めての花火!嬉しい!」

「花火ええな」

30分くらいかけて、花火を楽しむ。

夏の夜、少し風もあって、空には雲と星が見えてて、花火をつけている時だけ火花で相手の顔が照らされて見える。

えっ、どうしよう、ロケーションが良すぎる。

 

「あ〜いっぱい買ってきてくれたのにもう終わっちゃう」

「最後は線香花火やな」

 

彼が火をつけてくれる。

 

「お願い事しよ!最後まで残ってた方が叶う!」

「ええで」

バチバチッ

「・・・」

「・・・」

 

ふたりとも願い事が思いつかない。笑

 

ボトッ

ボトッ

「あ〜!!落ちちゃった」

「思いつかんかったわ」

「流れ星とかもそうだけどさ、それくらいいつも願ってることしか願掛けできないんだって言うよね?」

「よし、次こそ、、、」

 

ねえ。

さっきから気付いてたけど、後に火がついた花火をわたしに渡してくれてるんですけど!

わたしのお願い叶えようとしてくれてる?

 

バチバチッ

「よし、決めた!」

「う〜ん、人並みの幸せ」

「それはもう持ってるよ、見ようとしてないだけ」

 

ポトッ

ポトッ

瞬殺。

 

「あー!どっちが先に落ちた?」

「にこさんですね」

「やっぱり、そんな簡単には叶わないか」

「なにお願いしたん?」

「世界平和」

「規模がデカいな!」

 

 

ほんとはちがうけどね。

 

 

つづく

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